2014年4月18日金曜日

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地震の前兆[編集]

地震の前兆の定義は、資料によってその認定範囲が大きく異なる場合がある。IAPSEIが1989-1990年に行った評価では、約20のの前兆とされる事例のうち、大型余震前の余震活動低下、前震(海城地震の研究報告に基づく)、地球化学的前兆(伊豆大島近海の地震の研究報告に基づく)の3つだけが「全幅的に信頼できる前兆」、地殻のひずみ(1923年関東地震の研究報告に基づく)、大地震に数時間先行した土地傾斜(1944年東南海地震の研究報告に基づく)、大地震の前の地震活動や地殻活動(日本海中部地震の研究報告に基づく)の3つは「追加的証拠がなければ判定しがたい事例」、それ以外の15事例は「前兆とは認められない事例」と厳しく評価している。一方、力武(1986)、気象研究所地震火山研究部(1990)、防災科学技術研究所(1995)[49]などは「前兆とされる事例」として数百の事例を紹介している。こうした違いは前兆をふるい分けしているかどうかに起因するもので、扱う際には注意を要する[23]
ここでは参考として、『地震の事典 第2版』において「地震の前兆(先行現象, precursor)といわれる現象」として紹介されている事例を示す[23]
地震の前兆(先行現象)といわれる現象の分類[23]
種類現象現象の
時間規模
観測方法
地殻変動土地の水平歪速度の変化長期・短期GPS光波測量ひずみ計伸縮計英語版など
土地の傾斜の方向や速度の変化長期・短期水準測量傾斜計
土地の昇降速度の変化長期・短期水準測量、傾斜計、GPS、検潮重力測定
地球潮汐降雨など外部からの擾乱に対する
地殻のレスポンス(応答)の変化
長期伸縮計、傾斜計、重力計など
地震活動地震活動の異常(異常な活発化や静穏化
空白域、ドーナツパターン形成、活動の移動など)
長期地震計
地震活動の特性の変化(地震波形、発震機構b値など)長期地震計
前震短期地震計、体感
地震波地震波の速度、減衰、散乱などの変化長期地震計
電磁気地磁気の異常変化長期・短期磁力計磁気測量地磁気変化計
地電位差、地電流の異常変化短期電位差計
地殻の電気伝導率の変化長期電気探査
地磁気の短周期変化に対する地殻のレスポンスの変化長期MT法英語版GDS法
土地の電気抵抗の変化短期比抵抗変化計
電磁放射短期電波受信機
電波伝搬状態の変化短期電波受信機
地下水など井戸の水位変化短期水位計、目視
湧出量の変化短期流量計、目視
井戸や泉の水温変化短期温度計、体感
井戸や泉の水質(におい、濁り、成分
ラドン含有量など))変化
短期化学分析、目視、嗅覚
断層ガス(地中ガス)の化学成分短期化学分析
その他動物の異常行動短期目視
地鳴り短期聴覚
発光現象短期目視
前兆検出のための観測の中で異常(anomaly)が発見されても、地震に結び付けられるものは少なく、それ以外のほとんどがノイズである。ノイズの中には原因が明らかなものもあるが、不明なものも多いため、前兆かノイズかの判断は難しくなる。また、前兆の出現範囲は、ふつう地震の大きさに関係があると考えられるが、地震の性質や地下構造によっても異なるだろうと考えられている。これらは、地震予知の困難さの一因にもなっている[23]
なお、宇津(2001)によれば、日本のように地質構造が複雑な上に気象や海象の変化に富み、かつ社会活動が活発な国は、ノイズが多い傾向があり、大陸に比べると観測環境は厳しいという[23]

前兆と地震発生の関連[編集]

地震の前兆とされるものには科学的裏付けが不十分な報告も含まれることから、前兆と地震発生との関係(シナリオ)が明らかにされていなければ、科学的な予測とは言えないとする見方がある[50]
大中(1992,1998,2000)は力学的プロセスで区分した地震の発生過程の中で、前兆の位置付けを示した。大地震を力学的不均質場における不安定動的破壊と考えた場合、同一場所での地震の繰り返し過程は以下のようになる[50]
  1. 大地震発生直後から始まる断層強度の回復過程とテクトニック応力の増大により、リソスフェア弾性的に変形し、ひずみエネルギーが蓄積される過程
  2. テクトニック応力が高まるにつれて不均質リソスフェアが局所的に非弾性的に変形する過程
  3. 局所領域に変形が集中し破壊核が形成される過程
  4. 動的高速破壊伝搬過程(本震の発生)
  5. 動的高速破壊伝搬過程停止直後の余効的調節過程(余効変動余震
この中で3.の破壊核形成の過程は近いうちに本震が発生する可能性が高まっている段階であって、この過程にあることを何らかの方法で検出することができればそれが前兆である。これを監視することにより、短期予知や直前予知の手法が確立されるとした。なお、動的破壊が始まるときの破壊核の大きさを臨界サイズというが、臨界サイズに至るまでの時間とその大きさはその場の地学的な環境に依存する[50]

研究の種類[編集]

地震予知・地震予測には多くの種類があり、学問領域も複数にわたっている。

地質学・測地学[編集]

地殻変動[編集]

1999年イズミット地震におけるクーロン破壊関数(ΔCFF)の変化の推定地図。紫は応力が減少した部分、赤は応力が増加した部分。遠田・T.Parsons・R.Steinによる[51]
古い記録では、1694年能代地震において地震の2か月前に埋木が地表に現れたほか半月前に石灯篭が風も無いのに倒れたことが記録されているが、後者は地盤の流動によるものとする指摘もある(今村、1977)。1793年西津軽地震や1802年佐渡地震では異常隆起によるものと考えられる海岸線の後退が記録されているが、前者は信憑性に疑問を呈する指摘がある(佐藤、1980)。1872年浜田地震では、地震の数十分から数分前に潮が引いてアワビを手掴みできたという記録も残っている。これらは目視によるものだが、明治以降は計器観測に代わっている。地殻変動は、水準測量や非定期的な測量により検出される定常的な地殻変動が2-3年から十数年の期間で次第に加速・減速・逆転する長期的変動と、伸縮計や傾斜計などの連続観測により検出される本震直前数分から数時間・数日の期間の短期的変動に大別される[52]
地震発生前後の水準測量の結果から、1927年関原地震では地震3か月前に震源付近で2-3cmの隆起があったほか、1961年長岡地震や同年の北美濃地震、1967年麻積地震でいずれも地震前に2-3cm程度の異常な隆起が観測されている。また1964年新潟地震では、檀原(1973)の報告によると、19世紀末の第1回測量から続いていた緩やかな隆起が1955-1956年に急激な隆起に転じ、いったん小休止した後に地震が発生する経過をたどったとされるが、茂木英語版(1983)などは誤差による見かけの変動であると反論している。ただし、この付近では地殻変動観測所の傾斜変動のデータも異常を示している[52]
1983年日本海中部地震では、水準測量と潮位の測定において男鹿半島周辺で1978年ごろから隆起が加速し、その値は地震までに約5cmに及んだ。また男鹿の傾斜計では1978年頃から、前述とは反対方向である東上がりの異常な傾斜変動が観測された。この地震においては、地震空白域(後節参照)が生じたことも報告されている[52]
アメリカでは、1971年サンフェルナンド地震に先行して震源付近で20cm地殻に達する隆起が観測されており、これは断層面におけるクリープが断層下端から地表に向けてゆっくりと進行したことが原因とする報告がある。なおカリフォルニア州南部の広範囲で約45cmに達する隆起があったとする報告があるが、これは誤差による見かけの変動に過ぎないとの反論もなされている[52]
1944年昭和東南海地震では、今村明恒の要請により陸地測量部(現国土地理院)が実施していた静岡県掛川市付近での水準測量の最中に地震が発生し、特筆すべきデータが得られた。地震3日前と前日では許容誤差を大きく超える測定差があり、当日の地震発生直前の測量中には水準儀の気泡が揺れて静止しないほどだったと記録されている。茂木(1982)はこれを2-3日前に始まった異常な地殻変動が本震に向けて次第に加速したためだろうと推測している[52]。この記録を基礎とした研究によりプレスリップ理論が構築され、東海地震予知の根拠に位置付けられて、1978年制定の大規模地震対策特別措置法に基づいて警戒体制が整備された。一方で木股・鷺谷(2005)は、数日前から当日午前中までの測定差はプレスリップがあったと断定するには精度が低すぎ、地震直前(10分前と推定)にプレスリップがあったとすれば説明できるとしている[53][54]
1943年鳥取地震では震源から60km離れた生野銀山の傾斜計で地震の6時間ほど前から、1952年吉野地震では同じく94km離れた逢坂山の伸縮計で地震の10か月ほど前から、それぞれ異常な変化があった。1973年根室半島沖地震では、同じく約250km離れたえりもで観測坑内の湧水量変化に異常があったほか、1978年伊豆大島近海の地震では石廊崎で地震の1か月前に気象庁設置の体積ひずみ計で異常な変化を観測している[52]
1970年代頃からは、観測データをより客観的に数値解析する試みも行われた。飯田・志知(1972)は愛知県犬山の伸縮計と傾斜計のデータに短周期除去のディジタル処理を施して、1969年岐阜県中部地震(震源-観測所の距離は48km)と1971年渥美半島沖の地震((同90km)の前兆と見られる変動を抽出している。Ishiguro(1981)はベイズ法を応用して観測データの変動の多様な要因を分離している。Ishii(1976)はチェビシェフ多項式を用いて地殻変動を近似するモデルを作成し、実際の値とのずれから異常を判定する手法を開発、震源から80km離れた地点の傾斜計のデータから1970年秋田県南東部の地震(M6.2)の前兆と見られる変動を検出した。石川・宮武(1978)はウィーナーフィルタ英語版を用いた手法を開発している[52]
観測データの変動を複雑化させる要因として、降雨の影響がある。田中(1979)はタンクモデルを用いて降雨に対する応答を補正する手法を提唱し、山内(1985)はこのモデルによる補正がうまくいかないときに観測所の周辺でしばしば地震が発生することを報告している。岡山・兵庫の山崎断層では断層破砕帯を跨いで群列観測が行われているが、尾池・岸本(1977)はそこでの伸縮記録から、降雨後のひずみの変化に異常があると微小地震が活発化する場合があることを報告している[52]
静的応力場におけるクーロン応力を規定するクーロン破壊関数(ΔCFF)の変化が地震の活発化や静穏化をもたらしうることは、Chimery(1963)のほか多くの研究者によって報告されている。1989年ロマ・プリータ地震や1992年ランダース地震ではΔCFFの変化とそれに対応する地震活動の変化が報告されている(Reasenberg and Simpson,1992; Jaume and Sykes,1992; Stein et al.,1992; Harris and Simpson,1992)。King et al.(1994)はΔCFFの変化が地殻内のせん断応力の変化であると報告している[55][56]
地震波速度の変化の報告が一時期活発に行われたこともあった。初期の報告として日下部(1915)のものが知られ、日本では1940年代から1060年代にかけて多くの報告がある。旧ソ連のガルム地方では集中的な観測が行われた。しかし、その後の報告では観測誤差を超えるようなものは出てこなくなった(宇津,1985)。宇津(2001)によると、地震の際の応力変化が50bar程度であることから考えて、地震波速度の変化は0.1%程度しかないだろうと推察されているが、震源域のアスペリティなどごく狭い領域に限定すれば、技術的に困難を伴うが発見可能かもしれないという[57]
このほかには、地殻変動の記録に含まれる潮汐の振幅や位相が地震前に変化するという報告(Nishimura,1950; Mikumo et al.,1977)や、地震の直前に地球潮汐の振幅や位相に異常が検出される可能性があるという報告(Tanaka and Kato,1974; Beaumont and Berger,1994)などがある[52]

地震活動[編集]

地震活動を概観した時に見出される空白域や静穏化・活発化と地震発生のと関連も議論されている。
過去に大地震を起こしたことが分かっているものの長い間大地震が起きていない地域を、第一種空白域という。大森(1907)などにより指摘はなされていたが、Fedotov(1965)や茂木(1968)らによって1960年代に明確に認識されるようになった。空白域の考え方によれば、ある期間内では大地震の震源域はお互いに重複せず活動帯を埋め尽くすように起きる[58]
メキシコのオアハカ州沿岸では大竹ら(1977)によって指摘されていた空白域で1978年にM7.8の地震が起きた。1973年根室半島沖地震(M7.4)は宇津(1972)などにより空白域と指摘されていた所で起きた。ただし、前回の1894年のM7.9よりも規模がかなり小さかったため、空白域が完全に解消されたのかが議論となったが、その後30年間は大地震が起きなかった。同じくメキシコのミチョアカン州沿岸ではSingh et al.(1981)らによって空白域が指摘されていて、1981年にM7.3の地震が起きたがこれで空白域が解消されたのか大きな地震が続くのか議論となった後、1985年にM8.1のメキシコ地震が起きている。その一方で、1994年北海道東方沖地震が起きた時点の色丹島沖では、1969年の前回地震から25年しか経っていなかったため空白域ではないと考えられていたが、後に発生様式が1969年(プレート境界型)とは異なる海洋プレート内部の型であり矛盾していなかったことが分かっている[58]
McCann et al.(1979)やNishenko(1991)などは空白域の理論を用いて環太平洋地域の沈み込み帯の大地震を予測しようと試みたが予想通りにいかない例が目立っており、石橋・佐竹(1998)、大竹(1998)、宇津(1998,1999)などのように問題を指摘する報告がある[58]
大地震に先行して普段起きていた微小地震活動が顕著に減少する地域を、第二種空白域という。1952年十勝沖地震では井上(1965)や宇津(1968)などによって空白域が生じていたことが分かっている。また1978年メキシコ・オアハカ州沿岸の地震は第二種空白域でもあったことが分かっている。一方、1983年日本海中部地震ではM4程度以上に限ると1978年ごろから静穏化がみられるが、M2-3級を含めるとはっきりしなくなることが報告されており、地震活動が活発な地域ではしきい値を高めにした方がよい場合があるとされる。第2種空白域が生じる物理的原理は十分には解明されていないが、山科(2001)は何らかのきっかけで偶然生じた地震活動の不活発さがひずみの蓄積率を増して、それが大地震を促している可能性を述べている。なお、いったん静穏化したように見えても、大きな地震を起こすことなく再び元の状態に戻ることも少なくない[58]
大竹(1980)や前田(1990)は第二種空白域の発生から本震までの期間と本震のマグニチュードの間に相関があることを報告しており、大竹(1980)はさらに空白域の長径とも相関があるとしている。しかし、期間や空白域の大きさは研究者により大きな差があるほか、本震の震源域の大きさと空白域の大きさは必ずしも一致せず、どちらかが大きかったりする[58]
上記の他に、大陸プレート内部において中小規模の地震活動帯の中に生じる静穏化域を第三種空白域とする報告もある(石川,1990,1995)。1995年兵庫県南部地震、同年の新潟県中部の地震(M5.5)、1997年の山口県北部の地震(M6.6)などはこの種の空白域で生じたと報告されている[58]
地震活動度を数式化して表現する試みも行われた。Habermann(1981,1988)やWyss(1997)は、単位時間当たりの地震の平均的発生率と標準偏差を用いて活動度の有意な差を示すζ値を考案した。Wiemer and Zuniga(1994)、Wiemer and Wyss(1994)、Katumata and Kasahara(1999)はこれを地図上に表示するζMAPを発表している。なお、これらの算出式は誤差要因となる余震を考慮していないため、データから余震を予め除去しておく必要がある。一方、吉田ら(1997他)はこれを単純化し比較対象となる期間を任意の適当な長さとして柔軟な形にしたCHASE(change of seismicity)を提案している。地震活動の経過を近似した理論値と実際の値の残差を正規分布と考えると、大きな残差の頻度の低さを見積もることができるが、尾形(1988,1992,1998)などはETASモデルを用いて東北地方太平洋側などで静穏化の例を報告している[58]
大地震の発生に先立って、その震源域の周りで地震活動が活発化する領域が出現することがあり、第二種空白域を囲むように分布する。茂木(1969)はこれをドーナツパターンと名付けた。例えば、1978年島根県東部地震(M6.1)では半年ほど前から微小地震がドーナツ状に分布し、そこを埋めるように本震が発生している(山下・井上,1979)ほか、1923年関東地震では、1894年明治東京地震、1895年茨城県南部の地震、1909年房総沖の地震、1921年茨城県南部の地震と約30年前から大型の地震がドーナツ状に発生している(茂木,1980)[58]
大地震の発生に先立って起こる小さな地震を前震といい、しばしば本震との関連性が議論される。本震の震源は破壊の開始点であり、直接的な前震はこれに近いところで起きる性質がある[58]。 1995年兵庫県南部地震では、前日に明石海峡で最大M3.5の地震を含む地震活動があった[59]。1978年メキシコ・オアハカ州の地震では1978年に入ってから空白域内でM4クラスの地震が発生し始めた。前震はドーナツパターンの一部を形成したり、空白域を区切る地震になることがある。前震の中には、前段落の1923年関東地震の例のように、時間的・空間的に離れたものもある。この種の地震は「広義の前震」あるいは「関谷型の前震」(関谷,1976)と呼ばれる。また、群発地震性のものは「前震スウォーム」と呼ばれる[58]
グーテンベルグ・リヒター則において規模別の頻度分布を示すb値も、地震活動との関連が議論される。前震活動にはb値が低いものがあるほか、大地震の前にその震源域付近でb値が低下したという報告が多数ある一方、b値が上昇したという報告もある。1976年唐山地震では、5年ほど前からb値が上昇し、その後約2年間0.5程度まで低下、その後本震となった(李ら,1978)。b値が予知にどの程度有効かは十分に解明されていない[58]
潮汐と地震活動の関係を問う議論もある。尹ら(1995,1996)は潮汐力によるΔCFFをそれぞれの地震発生時において算出し、相関を示すパラメータYの値を比較し、大地震の前はY値がしばしば大きくなると報告した。LURR(Load-Unload Response Ratio)とも言う。原理としては、大地震が近づいて応力が高まった地殻では僅かな変化が地震に繋がることが考えられている。しかし、Y値が低下した後大地震が発生したり、Y値が一旦上昇して通常レベルに戻った後しばらくして大地震が起きたりするなど様々なパターンがあり、予知にどの程度有効かの議論は進んでいない[58]
そのほかにも、大地震との関連性が議論されている研究がある。Savage(1983)は、沈み込み帯における沈み込みの過不足を「すべり欠損(バックスリップ)」があると仮定して説明し、これをモデル化した。この理論により、すべり欠損の大きさやプレート間カップリングの値などからプレート間の大地震を予測できる可能性が議論されているが、2011年東北地方太平洋沖地震により理論に疑問が呈されるなど、理論の正しさを含めて結論は出ていない[60]。また、高感度地震観測網の観測により発見された深部低周波微動やこれに関連して起きるスロースリップなども、すべり欠損を補う地殻変動として研究が行われている[61][62]

余震予測[編集]

余震については予測の手法が確立され、実際に短期予測の発表も行われている。余震に関する改良大森公式が基本に用いられ、グーテンベルグ・リヒター式と組み合わせて規模の大きな地震の確率を予測する試みがReasenberg and Jones(1994)、塚越ほか(2000)らによって行われている[58]。地震調査研究推進本部は余震の確率評価の手法を検討し、1998年に報告をまとめている[63]。2011年東北地方太平洋沖地震では気象庁が余震の発生回数や最大規模の予測を定期的に発表した(東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録#余震の発生確率参照)[64]
また、松浦(1986)は余震活動が一時的に低下した後に大きな余震が起こることを見出し、1995年兵庫県南部地震では本震8日後に発生したM5.0の余震に先立つ活動低下を検出して注意を促している(松浦,1995)。また、山科(1996,2001)は余震のマグニチュードを用いて算出した累積エネルギーが階段型を示すことを見出し、このグラフから大きな余震の時期やマグニチュードの上限が推定できる可能性があるとしている[58]

地質調査[編集]

古地震を引き起こしたり、将来大地震を引き起こす可能性がある断層活動履歴を地質調査により解明する試みも行われている。地表に近い断層については断層を横切るように溝を掘ってその断面を調べるトレンチ調査が主流である[65]。トレンチ調査はサンアンドレアス断層で始まった手法で、日本では1995年兵庫県南部地震以降に行政が力を入れるようになった。海底の断層に対しては、音波探査で位置を推定した後に両側で掘削を行い年代を決定する手法が主に用いられる[66]。航空写真や衛星リモートセンシングによりリニアメントを検出する手法も、補助的に用いられる。
海域の大地震については、地震の度に起こる隆起や沈降を反映した海岸段丘などを調査することで地震の履歴を推定する手法[66]や、津波堆積物を用いた手法などがある。
他方、地殻内部の構造を知るために物理探査の一種である弾性波探査(地震探査)も行われている。爆薬などで起こす人工地震を利用したものもあれば、自然地震を利用したものもある。主に、地殻内の地震波速度の構造(三次元の地震波トモグラフィーなど)や、地震動の大きさに影響する表層地盤増幅率の調査が目的とされることが多いが、地殻内の密度や温度の調査も行われている[65]

歴史的観点・統計学[編集]

歴史地震から繰り返し発生する地震の様相を推定し、統計的に再来時期を求める手法は、近代地震学の初期から行われている。1905年に今村明恒は関東の歴史地震から大地震が約100年間隔で起こるとする論文を雑誌に寄稿している[19]。1964年に国会の地震対策委員会で河角廣が発表した「南関東大地震69年周説」は、鎌倉における強震記録などから南関東における地震は69±13年の周期であり、その26年間はその他の期間よりも強震発生確率が4倍高いとするものであった[67]。なお、どちらもマスメディアにセンセーショナルに取り上げられ、社会問題となっている[19][67]
また、石橋(1998)などにより神奈川県小田原付近では1633年から1923年までほぼ等間隔で大地震が起こっている事が指摘され、統計的解析により73.0±0.9年が周期であり次の発生は1998年±3.1年とする「神奈川県西部地震」が想定され、国や神奈川・静岡両県が被害想定を行うに至った[68]。ただし、この説には疑問も呈されているうえ、1998年を過ぎても想定の地震は発生していない[69]
地震の周期性を説明する学説は2通りある。次回の地震までの間隔は前回の地震の規模に依存するというタイムプレディクタブルモデル(時間予測モデル, time-predictable model)と、次回の地震の大きさは前回の地震からの間隔に依存するというスリッププレディクタブルモデル(slip-predictable model)である。Shimazaki and Nakata(1980)によればタイムプレディクタブルモデルが有力とされている[37]
ケーリス・ボロク(V.I.Keilis-Borok)らは、1970年代半ばからパターン認識を利用した予知手法を提案した。これは地震発生の物理モデルを考えずに、地形や地質、地震発生の状況などの様々な情報を定量化して独自のアルゴリズムを組み予測するものである。当たったとされる例もあるが、実用的なレベルには達していないと考えられている[70]。ロシアではこれに類する"Reverse Tracing of Precursors (RTP)"や"M8"という手法が開発され、ロシア政府の地震予知にも取り入れられている[71][72]。長尾年恭ら東海大学のグループは、RTLを応用したRTM法を提案し「地下天気図」と名付けて研究を行っている[73]
ソネット(Sornette,1995,1998)は、大地震の前のひずみの蓄積に伴う地震などの前兆現象の変動が複素数次元を持つフラクタル的な振る舞いをするとしてこれを数理モデル化した[74]。五十嵐ら(2002,2006)はこの式を準用し、東海地方の地震活動や水準測量など各種前兆について、また1995年兵庫県南部地震の前に観測された大気ラドン濃度の変動について、それぞれ検討を行い数理モデル化した[75][76]。この研究から、水準測量のデータに基づいて東海地震が2003-2004年に発生するという情報を発表したが、成功には至らなかった[77]。類似するものとして、前兆現象の最も遠い出現範囲を基に数式化した力武(2001)の「限界距離法」がある[78]

電磁気学[編集]

電磁気の観測は比較的簡単な装置で可能なものがあるため報告件数も多い一方、地震との関連性が十分に説明されていないものが含まれるので注意を要する。電磁気の観測の利点として、穴を掘って直接観測できない深部の情報が得られる可能性があること、観測値が広い範囲の地殻の変化の平均値を反映していると考えられることが挙げられる。一方問題点として、変動の原因やメカニズムが十分に理解されていないものが多く、関連性を立証することが難しいこと、地球内部起源ではない人工的ノイズが多く、それを除去して信頼できる情報を取り出すことが困難な場合が多いことが挙げられる[79]

地磁気[編集]

地磁気や空間磁場などの磁場変動を対象とするものでは、全磁力を扱ったものが多いが、偏角伏角、南北・東西・上下の3成分などパラメータ別に扱ったものもある。少数の観測点での連続観測に基づくものが多い。地震前後の磁気測量により磁場の分布の変化を見出した例などが、主に報告されている[79]
1974年アメリカ・カリフォルニア州ホリスター付近の地震(M5.2)では約2か月前に約1nTの地磁気増加があった(Smith and Johnson,1976)ほか、1978年伊豆半島河津付近の地震(M5.0)では2か月前に約5nTの地磁気減少があったと報告されている(Sakai and Ishikawa,1980)。中国でも1975年海城地震や1976年唐山地震に先行して10-20nTの地磁気変動があったと報告されている(朱,1976; Raleigh et al.,1977)が、力武(2001)は観測精度が明らかではないことを指摘している。旧ソ連では、1977年イスファリン-バトネン(Isfarin-Batnen)の地震(M6.6)で1nT程度の地磁気変化があったと報告されている(Asimov et al.,1984)。一方、1976年ガズリの地震(M7.3)では震央付近にあった磁力計が何の変化も示さなかったと報告されている(Shapiro and Abudullabekov,1978)[80]
メカニズムとしては、地殻内の応力変化が圧電効果(ピエゾ効果)を通じて磁場変動となって現れるという説がある。この原理により期待される磁場変動は振幅1nT程度であり、過去の事例でこれを超えているものは他の要因が関与しているのではないかと推察されている。他の説として、地殻内の応力変化による歪の不均質が地下水の流動を生み、これが流動電位の効果により地殻内に電位勾配を生んで電流が流れ、磁場変動となって現れるというものがある。こちらの場合、水が関与しているため後述の地電流や電気伝導度の変化と相関があるだろうと考えられている[79]

地電流[編集]

地電流を対象とするものでは、2地点間の地電位差を扱ったものが多い。なお、地中に電極を置くことは表面電位による誤差の問題が付きまとうため、電極の周囲のイオン濃度を一定に保つ平衡電極を用いるのが適切である。系統的(従来研究をベースに積み重ねていく研究)ではないが、中国や日本を中心に様々な報告がある[79]
古いものでは、1923年関東地震において350km離れた仙台で数時間前から変化が生じ地震後もしばらく続いたことが報告されている(白鳥,1925)。また、茨城県柿岡の観測所で行われた地電位差観測では、1936年新島沖の地震(M6.3)、1938年紀伊水道の地震(M6.7)、1943年鳥取地震、1944年東南海地震などM6以上かつ200km以上離れた地震で変化があったことが報告されている(吉松,1937,1938,1943,1989)。新しいものでは、兵庫・岡山の山崎断層での集中観測において1984年に発生したM5.6の地震による変化が観測されている(宮腰,1985)。アメリカでは、サンアンドレアス断層において1974年のM5.2の地震と1975年のM2.4の地震において地電位差の異常があったと報告されている(Corwin and Morrison,1977)。中国でも。北京郊外の紅山州で1966年から行われた観測においてM3以上の地震では平均5時間前から変化があり地震後元に戻った(Coe,1971)ほか、1974年昭通地震(M7.1)で数時間前に90km離れた地点で地電流の異常があったことや(Allen et al.,1975)、1975年海城地震では震源から25kmほど離れた地点で1か月前から地電位差の異常が現れ始め10日前にピークを迎えた後地震直前に急反転するという変化があったこと(朱,1976; Molnar et al.,1977)などが報告されている。旧ソ連では、1970年代後半にカムチャッカで活発に観測が行われ、複数の報告がされている(Fedotov et al.,1970,1972; Sobolev,1975)[81]
特に、ギリシャではVAN法が実用化されている。VAN法は、50-200m間隔で1対の地電流観測所をギリシャ国内各地の約20か所に設置、10kmを超える間隔の観測所等も併用しつつ、SES(seismic electric signals)と呼ばれる継続時間数分-数時間の過渡的な地電位差変化をターゲットとして観測を行うものである。出現時期は地震の1か月前から数時間前ごろ、出現場所は必ずしも震源の近くではなく複雑な形態で現れることが分かっていて、これらの経験則から予知情報を発表している[79]
メカニズムとしては、圧電効果(ピエゾ効果)の説もあるが、地電流が対象とする直流成分に対する効果は小さい。他には、前段落でも述べた地下水の流動による流動電位の効果とする説、後の段落で述べる電気伝導度分布の変化によるものとする説などがある[79]
しかし、1000km 程度遠方まで伝播する雷雲による電磁変動を感知している可能性や、経済活動による様々なノイズ(鉄道、水道管防蝕の為の電流)や、センサー(検出コイル)が地震波の直接的影響で電位を発生した結果を誤認している可能性もある[82]

電磁波[編集]

電磁波(電磁放射)を対象とするものは、震源域からの放出を捉えるものと、伝播の異常を捉えるものに大別される。極超長波(ULF)から短波(HF)まで広い帯域の電磁波が観測対象となっている。なお、報告の多くは地震との時間的な関係のみが明らかでメカニズムの相関を明示したものは少ないとされている[79]
1980年近畿地方の深さ380kmで起きたM7.0の深発地震において、震央距離にして250km離れた長野県菅平で81kHzの空電(による電磁波パルス)の雑音強度が30分前から上昇し地震発生とともに元に戻ったことが報告されている(Gokhberg et al.,1982)。以降、グループによる研究が多く報告されている。電気通信大学のグループは関東地方周辺に観測網を展開した(茅野,1993)。防災科学技術研究所のグループは関東地方に設けた深さ300-800mのボアホール地中VLFアンテナで観測を行い、1994年北海道東方沖地震に先行して2日前からパルス数が増加し20分前にピークを迎えた後元に戻るという変化を観測した(防災科研,通信総合研究所,1995)。京都大学のグループは京都府宇治に設置したボールアンテナでLFとVLFの異常パルスの観測を行い、1995年兵庫県南部地震の1週間前から著しい増加があった(尾池,山田,1995)。1989年ロマ・プリータ地震や1988年スピタク地震(M6.9)でも異常な電磁放射を観測したという報告がある(Fraser-Smith et al.,1990; Molchanov et al.,1992)。力武(1997)は電磁波に関する60の報告例から、以上から地震までの期間は平均0.26日間であり、この種の異常は本質的に短期的なものであると報告している[83]
Gufeld et al.,(1994)は1988年スピタク地震における観測から、VLF帯の電波の振幅と位相は、送信曲と受信局を結ぶ大円の範囲の電離層が地震の影響を受けていると変化する場合があると報告している。日本では早川ら(1996)、Molchanov et al.,(1998)が1995年兵庫県南部地震でこれに該当する観測例を報告しているほか、他のM6以上の地震10個でも同じような効果がみられることを報告している(Molchanov,早川,1998)。この報告では、VLF電波強度の日変化グラフ上に現れる日出没に伴う変化の時刻(ターミネータ・タイム)が地震の数日前から日の出は早く・日日没は遅くなる変化があり、その原因は下部電離層のVLF反射高度が数km下がることで説明されるとしているが、その変化の根本原因は分かっていない。このほか、串田(1996)はFM放送の電波の流星反射を用いた観測法を報告しているが疑問も呈されている[83]
Molchanov et al.(1993)は大地震の震源付近上空の人工衛星が異常な信号を捉えると報告しているが[83]、後にいくつかの衛星観測プロジェクトが行われている。地震前兆としての電磁気観測を主要ミッションとする初の衛星は、2001年12月にロシアが打ち上げたCOMPASS-1である。COMPASS-1は打ち上げ後に故障し失敗に終わったが、2003年にはアメリカの民間企業がQuakeSatを打ち上げ、約11か月の間に数個の地震で先行する電磁放射を観測したと報告されている[84]。2004年に打ち上げられたフランスのDEMETERの観測では、2年半の間に発生したM4.8以上の浅発地震9,000回において地震発生の0 - 4時間前にVLF帯の電波の明らかな減少が見られたと報告されている[85]ほか、2009年のサモア沖地震の7日前と2010年ハイチ地震の3日前にもそれぞれ電離層の擾乱を観測したという[86]
考えられるメカニズムとしては、地殻内の応力変化が石英などの帯電しやすい鉱物内での電気分極や微小破壊による電荷対形成を起こし電磁波の発生に繋がるという説がある。この節は破壊実験でも確かめられているが、実験室レベルでは試料が小さいためか高周波が主体になるという特徴がある。地殻は導電性を持つため電磁波が地中から地上に到達するまでに減衰するが、ULF(300-3kHz)より高い周波数では1km以深になると電磁波が地上に到達しないくらい減衰してしまう。このことから、電磁波は地表に近い地殻の浅いところから放出されているとする説もある。また、大気中では電離層と地表の間が導波管の役割をするため長距離伝播が可能だが、震源域上空で何らかの要因により電離層の密度や高度の乱れが起こることで伝播異常が起こるという説がある[79]

電気伝導度・比抵抗[編集]

電気伝導度(比抵抗)測定により得られる断面図の例。青は伝導度が高く、赤・紫は伝導度が低い。
電気伝導度比抵抗)を対象とするものは、自然の電場を利用するものと、電気探査の人工的な電流により測定するものとがある。前者は一定ではないため精度が落ちる一方、後者は出力が限られるため通常は数km先までしか測定できない。GDS法を用いるのが一般的だが、水平方向の構造変化が少ない場所ではMT法も用いられる。観測例は報告されているが、震源が遠かったり、単独観測で比較性に欠けるなど、メカニズムの相関が明らかにされているとはいえない状況にある[79]。Yamazaki(1975)はコサイスミック(地震と同時性)の比抵抗変化を観測し場合によっては地震より先に起こっているようにも見えると報告している。アメリカではサンアンドレアス断層の地震での観測例がある(Mazzella and Morrison,1974)ほか、1989年ロマ・プリータ地震では地震後であるが地震を境に太平洋側から電流が流れるようになったという報告がある(Madden and Mackie, 1996)。旧ソ連ではガルムで活発な観測が行われ、MHD発電や水力発電の電力を利用して観測が行われたほか、地震に先行して比抵抗が10%以上低下する例が報告されている(Barsukov,1972,1973,1974; Barsukov and Sorokin,1973; Barsukov et al.,1974; Al'tgauzen and Barsukov,1972)。中国では、1976年唐山地震に先行して10kmや80km離れた地点で変化があった一方で震源に近い地点では変化が無かったという報告がある(力武,1979)。1976年松潘-平武地震[87]
考えられるメカニズムとして、地殻内のひずみや応力が不均質に変化し水の移動が起こることが原因とする説がある。地殻を構成する岩石自体は伝導度が低いが、含有する水の効果により、地殻の電気伝導度として観測される値は岩石そのものより数桁高い。そのため、地殻内の割れ目や隙間に存在する水が移動すると、地殻の電気伝導度の観測値も変化するだろうと考えられている[79]

地球化学・水文学[編集]

古くは1950年代に、日本で土壌中の気体や大気中のラドン濃度と地震の関係に関する論文が報告されている。1966年にソ連のウズベク共和国(現在のウズベキスタンタシュケントで起きたM5.5の地震では地下水中のラドン濃度の変化が報告されたが、そのメカニズムを示す仮説がショルツら(Scholz et al.,1973)のダイレイタンシー水拡散モデルで示されたことで研究が活発化し、1975年の中国・海城地震でも地震の前兆例として報告されている。しかし、茂木(1982)などの指摘によりダイレイタンシー水拡散モデルは疑問視されるようになり、研究は下火になっている[88]
その後、疑問視されたダイレイタンシー水拡散モデルに代わって、地殻の歪みと地下水の関係が注目されるようになった。上下を帯水層に挟まれた層に保持されている「被圧地下水」は地球潮汐に伴う水位変化や噴出量変化を起こすことが知られているが、このメカニズムが地震の時にも起こるという仮説をもとに地震の前兆としての地下水の水位や水温の変化が研究され、1974年伊豆半島沖地震(Wakita,1975)、1923年関東地震や1946年南海地震(川辺、1991)において仮説により説明できる変化があったと報告されている。しかし、地震の際にも変化を示さない地下水も少なくなく、この仮説に対する疑問も呈されている[88]
一方、岩石中に亀裂があると岩石と地下ガスや地下水との物質のやりとりが促進されるという仮説をもとに、地震の前兆としてこれらの濃度変化が研究された。1965年に始まった松代群発地震では地下水質の変化が観測され、逆に高圧地下水が岩盤の亀裂に貫入することで地震を誘発したとする説も出されている(中村、1971)。研究の対象は主にラドンのほか、水素ヘリウムアルゴンなどの希ガス、メタン二酸化炭素などで、濃度や同位体比の変化が取り上げられている[88]
井戸や温泉などの変化の報告もある。1923年関東地震の前に、熱海温泉の間欠泉で湧出変化があったことが詳細に記録されている。熱海駅前の「大湯」の間欠泉では駅前交番の警官によりその様子が記録されており、地震前年に活動が低下し12月には湧出を停止してしまった。これを重く見た行政が温泉の取水制限を課したところ、翌年5月頃から湧出が復活した。その後地震前日の8月31日に急に活動が活発化し、40分以上続く噴出もあったという。1933年昭和三陸地震では、地震の前に三陸沿岸の各地で井戸の枯渇があったことが報告されている。1946年南海地震では、四国や紀伊半島の沿岸で井戸の枯渇や水位低下があったことが報告されている。脇田(2001)によれば、こうした事例は地震の1週間前から前日のものが多い一方、いつも同じ井戸ではなく地震ごとに異なる井戸で起こることも多いという[89]
兵庫県南部地震でも、事後に地震に先駆けた地下水温泉水の水位、水圧、温度、組成の変化があったことが報告されている[90][91]

宏観異常現象[編集]

地震の前に動物が奇妙な行動ととったという報告は数多く記録されている。定説とはなっていないが、原因に挙げられることがあるものとして、微小な前震による地鳴りやアコースティック・エミッション(AE)、地電流の変化、地下水の水位・温度・成分などの変化、地下からのガスなどの物質の放出、帯電粒子の放出、空中電場の変化、海底や湖底などの状態の変化などがある[57]
そのほかにも、発光現象や火の玉、特殊な、植物の異常、地震雲、気温の異常などが報告されている[57][92]
宏観異常現象に関する最古級の記録としては古代ギリシャの都市ヘリケ(Helike)におけるものが挙げられる。紀元前373年に起こった地震はヘリケの滅亡の原因になったとされているが、地震の前にネズミヘビなどが一斉に逃げ出したことが記録されている[92]。近代の例では、1923年関東地震では、上原勇作陸軍元帥や佐藤鉄太郎陸軍中将らプロの軍人が大砲の砲撃音のようなものを聞いたという経験談が伝えられている[93]。一方、1933年昭和三陸地震では、地震前に地鳴りや風声のような音を聞いたという住民の証言があった。これらは地震発生後大きな揺れが到達する前に音を聞いたことによるものだと、国富信一や井上宇胤は分析している[94]。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では地元住民から大学などの研究機関に至るまで数多くの報告があり、これらの報告をまとめた資料もいくつか出されている[92]
こうした事例の多くは非専門家によって報告されていて、地震との因果関係がはっきりとされていないものが多い[57]
なお、力武(2001)は各種の報告を統計的にまとめ、異常の出現範囲(震源域からの距離)は地震の規模に比例して広くなる傾向があること、異常の発現から地震までの期間はばらばらであるものの、最も早い部類の報告だけを見ると地震の規模が大きいほど早くなる傾向があることを報告している[92]

その他[編集]

地震を発生させたり、断層への応力変化をもたらすトリガー(引き金)を予測したり観測したりすることによって、地震が発生する時期、また地震が発生しやすい時期を推定するという方法がある。主なものとして、月や太陽(月齢潮汐を含む)、惑星などの諸天体と地球との位置関係や距離関係により起こるというものや、太陽活動によるもの、低気圧や高気圧などによる気圧変化に伴うものなどがある。こちらについても、宏観異常現象と同様、未科学との区別の難しさ、研究や予測に際する基礎的知識の有無、信頼性、因果関係の解明度といった諸問題がある。
また、科学的な検証が行われているのか定かではないが、超能力など超越的な感覚による予知の例も報告されている[92]


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E9%9C%87%E4%BA%88%E7%9F%A5

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