2013年11月24日日曜日

糖尿病     SGLT2 阻害薬の現状と展望


新しい糖尿病治療薬8
SGLT2 阻害薬の現状と展望
大野晴也1),浅野知一郎2)
1)広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 創生医科学専攻 探索医科学講座 医化学研究室
2)広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 創生医科学専攻 探索医科学講座 医化学研究室 教授
 食生活の欧米化や運動習慣の変化に伴って,近年2 型糖尿病の罹患率は増加傾向にあり,社会問題となって
いる.糖尿病治療においては,インスリン注射のみではなく,SU 薬を始めとしたさまざまな内服薬が使用可能
となっており,その治療戦略は多岐にわたる.SGLT2 阻害薬はその作用機序から,「余分に摂取したグルコー
スを体外に排出する」という,他の糖尿病薬にはない特徴を持ち,体重減少効果も期待されており,興味深い
臨床成績の結果も多く報告されてきている.飽食時代の糖尿病治療において,SGLT2 阻害薬は本質的な問題
解決に直結する有効な手段であると考えられる.
 本稿では,主にSGLTの機能と,SGLT2阻害薬についての最近の知見について概説する.
SGLTの分類と機能
 グルコースは主要なエネルギー源として利用されている
が,疎水性の脂質二重膜に対して透過性を持たないため,
細胞内に取り込まれる際には糖輸送担体と呼ばれる膜蛋
白を必要とする.糖輸送担体は促通拡散型糖輸送担体
(glucose transporter;GLUT)と,Na共役能動輸送性
糖輸送担体(sodium glucose co-transporter;SGLT)に
大別される( 図1 , 表1 ).
 GLUT は,12 回膜貫通型の膜蛋白で,現在13 種類の
アイソフォームが報告されており,主に細胞内外の濃度差
に基づく促通拡散輸送を担っている.
 SGLTは,SLC5遺伝子ファミリーに属している膜14回
貫通型のトランスポーターであり,現在6種類のアイソフォー
ムが知られている.Na+-K+ATPase によって形成された
ナトリウム勾配を利用してナトリウムとグルコースを細胞内
に取り込む働きを有している1).ナトリウム勾配を形成す
特集糖尿病治療最前線2011
る際にATP によるエネルギーを必要とするため,SGLT に
よる基質の輸送は2次的能動輸送であると考えられている
( 図2 ).
 SGLT1 の主な基質はグルコースとガラクトースである.
主に腸管上皮に分布しており,腎の近位尿細管や気管や
心臓などにも発現が認められる.グルコースに高親和性で
あり,2 つのNa+ と共役して輸送を行う.SGLT1 遺伝子
の変異によりグルコース・ガラクトース吸収不良に伴う致
命的な下痢症が引き起こされることが報告されている2).
バソプレッシンやglucagon like peptide-2(GLP-2)など
のホルモンによって調節を受けることも明らかにされている.
 SGLT2 は,腎近位曲尿細管にのみ発現が認められてお
り,SGLT1 と約60 %の相同性を有する.SGLT2 はひと
つのNa+と共役してグルコースの輸送を行う3).グルコー
スは,低親和性で輸送能が大きい性質を有しており,糸
球体で濾過されたグルコースの大部分の再吸収が,この輸
送担体を介していると考えられている.糖尿病ラットの腎
臓では,高値となった血糖値を是正するように,代償性
にSGLT2 のmRNA 発現レベルが上昇している4).

http://www.igaku.co.jp/pdf/tonyobyo1101-3.pdf

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