スイス銀行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スイス銀行(スイスぎんこう)とは、スイスを拠点とし、スイス銀行法に基づいて運営されている銀行の総称、もしくは通称である。「スイス銀行」という単一の銀行は存在せず、スイス連邦の中央銀行であるスイス国立銀行とも別である。一般には、匿名性や守秘性の高さで知られる。
俗称としてスイス銀行という場合は、おそらくスイスプライベートバンクを指していると思われる。番号口座(ナンバーズアカウント)という、口座名義までが契約者の任意の番号で管理され名義人が表示されない匿名口座を開設することが可能で守秘性が非常に高いためである。プライベート・バンキング業務を標榜する金融機関は世界各国に多数あるが、スイスのプライベートバンクとは、無限責任をもつ個人銀行家(プライベートバンカー)がパートナーとして経営している銀行であり、世界の富豪に愛されてきた長い伝統と実績、それに先述の高い守秘義務規定がある点において、全く異なるものである。
口座の顧客の身元を知っているのは担当とごく一部の上層部だけで、口座番号が漏れてもそこから身元を割り出すことはできない。
入金は口座番号さえ知っていれば誰にでもできるが、万が一入金先を間違えると、守秘義務により、振り込んだ金は返って来ない(一般には可能な「組み戻し手続き」さえ出来ない)。
プライベートバンクにおいて、顧客は来訪の前に申請し、必ず決められた時間に来訪しなくてはいけない。他の顧客や自分の口座の担当以外の従業員との接触を避けるためである。エレベータは担当が待つ階にしか停まらないようにしてあり鍵も備えられている。
秘密口座では有価証券を除けば預金の引き出しの6週間前に申請しなくてはならない。また、公共料金支払いや給与振り込みは取り扱っていない。
口座維持費もかかることから最低で1000万円前後(為替相場にもよる)の残高が常に存在する事を要する。
プライベートバンクの主な顧客層は世界の王侯貴族や富裕層といわれている一方で、スイス銀行法に基づく顧客情報の厳格な秘匿・守秘性(高度なプライバシー保護)と番号口座(ナンバーズアカウント)により口座所有者の名前や住所を含む情報が一切開示されないという特徴は、非合法活動や犯罪を含む不法・不正な報酬の受け取りやその蓄財・脱税にも最適であり、世界各国の独裁者や犯罪者が利用していると言われ、「独裁者の金庫番」「犯罪者の金庫番」とも呼ばれる。
北朝鮮の金正日などがスイスの銀行に巨額の財産を隠しているとの噂は多々あるが、スイスの銀行法によりスイスの銀行は法的に犯罪が立証されない限り情報を開示できないため、実際に判明した事例は少なかったが、フィリピンのマルコス元大統領の不正蓄財の発覚と返還をきっかけに、退任したり逝去した国家指導者や独裁者の不正な蓄財が明らかになるケースが増える傾向にある。これはアメリカ同時多発テロ以降、世界中の国々や金融機関が資金洗浄に厳しく対処するようになりますます拍車がかかっている。ただし、全額が返還されるわけではなく、スイスの法律により約半額が返還されるのが一般的であり、かつ、返還先が不正を証明できずに時間切れで凍結解除となるケースが散見されがちである。
2011年、スイス政府(財務省)は僅か1ヶ月の期間に、国内銀行に対しコートジボワール、チュニジア、エジプト、リビアなど外国の指導者(ローラン・バボ大統領、ザイン・アル=アービディーン・ベン=アリー元大統領、ホスニー・ムバーラク元大統領、ムアンマル・アル=カッザーフィー大佐)の資産を封鎖するよう命令を出した[1]。
スイスプライベートバンク[編集]
スイスは、ヨーロッパの十字路と呼ばれ交易が盛んに行われていたため、為替業が古くから発達していた。またスイスは国民皆兵制を国是として、精強な軍隊を保有する重武装の永世中立国であり、国連をはじめとした国際機関の本部やオフィスを多数誘致しており、さらに各国の王族、貴族、富豪の資金を保全・保管していることから、他国からの侵略を受ける可能性は非常に低いとされている。ヨーロッパのことわざでは「スイスフランは金より堅い」といわれ、スイスの通貨の信頼性安定性は古来よりヨーロッパ諸国に知れ渡っていた。俗称としてスイス銀行という場合は、おそらくスイスプライベートバンクを指していると思われる。番号口座(ナンバーズアカウント)という、口座名義までが契約者の任意の番号で管理され名義人が表示されない匿名口座を開設することが可能で守秘性が非常に高いためである。プライベート・バンキング業務を標榜する金融機関は世界各国に多数あるが、スイスのプライベートバンクとは、無限責任をもつ個人銀行家(プライベートバンカー)がパートナーとして経営している銀行であり、世界の富豪に愛されてきた長い伝統と実績、それに先述の高い守秘義務規定がある点において、全く異なるものである。
口座の顧客の身元を知っているのは担当とごく一部の上層部だけで、口座番号が漏れてもそこから身元を割り出すことはできない。
入金は口座番号さえ知っていれば誰にでもできるが、万が一入金先を間違えると、守秘義務により、振り込んだ金は返って来ない(一般には可能な「組み戻し手続き」さえ出来ない)。
プライベートバンクにおいて、顧客は来訪の前に申請し、必ず決められた時間に来訪しなくてはいけない。他の顧客や自分の口座の担当以外の従業員との接触を避けるためである。エレベータは担当が待つ階にしか停まらないようにしてあり鍵も備えられている。
秘密口座では有価証券を除けば預金の引き出しの6週間前に申請しなくてはならない。また、公共料金支払いや給与振り込みは取り扱っていない。
口座維持費もかかることから最低で1000万円前後(為替相場にもよる)の残高が常に存在する事を要する。
その他のスイスの銀行[編集]
広く誤解されているが、スイスの大手商業銀行として著名なUBSやクレディ・スイスは、厳密にはプライベートバンクではない。正確には「プライベート・バンキング・サービスも提供しているスイスの大手商業銀行」あたりの表現が適切であろう。法人形態としては有限責任な株式会社であり、無限責任パートナーによる経営(スイスでプライベートバンカーを名乗るにはこれが法的な絶対条件とされている)ではなく、顧客対象として富裕層や機関投資家ではない一般の個人や法人も顧客対象としており、事業領域が顧客の資産の保全と運用に特化しているわけではなく、通常のリテールバンキング業務、融資、株式や債券等の自己売買(自社リスクでの売買)等の業務も行っており、収益構造やビジネスモデルも顧客から預かった資産の保全・管理・運用の手数料のみではなく、収益が顧客資産の増減と連動しておらず、金融商品の販売手数料を大きな収益源としている等々、プライベートバンクであるための条件を一つも満たしていないからである。 スイス銀行法第47条B項には、「銀行職員が職務上知り得た情報に関して、守秘義務に違反した場合は刑事罰の対象となり、罰金刑または最高6ヶ月の禁固刑、もしくはその双方の刑事罰に処せられる」とされている。銀行はそれぞれ高い水準の守秘義務規定を設けており、たとえ退職しても自分が担当した顧客の情報は絶対に守らなくてはならない。警察、司法当局、公務員等その他どんな権力もスイス銀行の顧客情報の開示を求めたり強制的に閲覧することは禁じられている。ただし犯罪に関わるお金と判明した場合は、スイス国内のマネーロンダリング条項により当局への通知が義務付けられていて、銀行はそれを遵守している。- UBS
- 1998年、スイス・ユニオン銀行 (UBS) とスイス銀行コーポレーション (SBC) の合併により新生UBS AGとして誕生。東京都千代田区大手町の大手町ファーストスクエアにUBSグループの拠点がある。
- クレディ・スイス (Credit Suisse)
特徴[編集]
『ゴルゴ13』や『ルパン三世』、『ブラック・ジャック』のような非合法活動や犯罪者をテーマとした作品にスイス銀行が登場する理由として、スイス銀行法の匿名性・守秘性の高さ、およびそれによってもたらされる負の側面が挙げられる。ちなみにゴルゴ13は口座番号が「F5R6I5D1A3XY」と設定されている。プライベートバンクの主な顧客層は世界の王侯貴族や富裕層といわれている一方で、スイス銀行法に基づく顧客情報の厳格な秘匿・守秘性(高度なプライバシー保護)と番号口座(ナンバーズアカウント)により口座所有者の名前や住所を含む情報が一切開示されないという特徴は、非合法活動や犯罪を含む不法・不正な報酬の受け取りやその蓄財・脱税にも最適であり、世界各国の独裁者や犯罪者が利用していると言われ、「独裁者の金庫番」「犯罪者の金庫番」とも呼ばれる。
北朝鮮の金正日などがスイスの銀行に巨額の財産を隠しているとの噂は多々あるが、スイスの銀行法によりスイスの銀行は法的に犯罪が立証されない限り情報を開示できないため、実際に判明した事例は少なかったが、フィリピンのマルコス元大統領の不正蓄財の発覚と返還をきっかけに、退任したり逝去した国家指導者や独裁者の不正な蓄財が明らかになるケースが増える傾向にある。これはアメリカ同時多発テロ以降、世界中の国々や金融機関が資金洗浄に厳しく対処するようになりますます拍車がかかっている。ただし、全額が返還されるわけではなく、スイスの法律により約半額が返還されるのが一般的であり、かつ、返還先が不正を証明できずに時間切れで凍結解除となるケースが散見されがちである。
2011年、スイス政府(財務省)は僅か1ヶ月の期間に、国内銀行に対しコートジボワール、チュニジア、エジプト、リビアなど外国の指導者(ローラン・バボ大統領、ザイン・アル=アービディーン・ベン=アリー元大統領、ホスニー・ムバーラク元大統領、ムアンマル・アル=カッザーフィー大佐)の資産を封鎖するよう命令を出した[1]。
問題が明らかとなった事例[編集]
- フィリピンのフェルディナンド・マルコス元大統領 - スイスから6億8400万ドルを既に返還済。
- ナイジェリアのサニ・アバチャ元大統領 - スイスから7億ドルを既に返還済。
- ハイチのジャン=クロード・デュヴァリエ元大統領 - 1986年、500万ドル(約6億円)が凍結されたが、ハイチ司法当局が不正資金であるという証拠を提出できないままでいるため、2008年6月3日に凍結解除された。
- ザイールのモブツ・セセ・セコ元大統領 - 1997年、800万フラン(約7億9000万円)の資金が凍結されたが、2008年末に凍結解除された。
- 第二次世界大戦で中立を維持していたスイスは各国の金融の中継点となり、ナチスの資産も流入した。その中には迫害したユダヤ人から没収した金なども含まれており、戦後調査が行われ複数のユダヤ人団体から訴訟を起こされ、1998年に12億5000万ドル(約1357億円)の賠償金の支払いが取り決められ、2008年6月末までに、2億ドル(約219億円)を残したすべての賠償金がホロコーストで犠牲になったユダヤ人、同性愛者、障害者、エホバの証人、ロマ族に対して支払われた。
- ロシアの石油会社、ユコスのミハエル・ホドルコフスキー元社長
- パレスチナのヤセル・アラファト元議長
- ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領
- 台湾の陳水扁前総統
- ペルーのブラディミロ・モンテシノス
脚注[編集]
関連項目[編集]
- ゴルゴ13 - さいとう・たかをの漫画。主人公のスナイパー・ゴルゴ13はスイス銀行に口座を持つという設定。
- ルパン三世
- 聖獣配列・霧の会議 - いずれも松本清張の小説。送金ルートとしてスイス銀行を利用する設定。特に前者の描写が詳しい。
- トロピコ - ゲーム内でプレシデンテ(プレイヤー)がスイス銀行の口座に私的財産を溜められるようになっている。
- アメリカン・エキスプレス
- スイス国立銀行 - スイスの中央銀行。
- UBS - スイスの大手商業銀行。旧スイス銀行コーポレイション。
- プライベートバンク
- プライベートバンキング
- 資金洗浄
外部リンク[編集]
- マネーロンダリング取り締まり スイスの実態(スイス放送協会)
- スイス銀行に溢れる「汚い資金」はどこへ?(同上)
- 世界の汚職とスイスの関係(同上)
- スイスを「浄化」、銀行のホロコースト損害賠償(同上)
- 金正日の秘密口座を追う (上)・(下)(統一日報)
- 金正日の秘密口座凍結を(統一日報)
- 金融の中心地スイス swissworld.org
- 世界の富豪の資産がスイスから大移動 アジアの小国シンガポールの野望
0 件のコメント:
コメントを投稿