眼底出血
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眼底出血(がんていしゅっけつ)は網膜表面の血管の破綻や閉塞することで起こる網膜の出血である。 出血の量自体は微小で貧血などの原因となるものではないが、重度の視力障害を来すこともある。
出血量、出血部位、出血位置、出血後の血行動態等により視力予後が変わる。
出血の位置により
また白血病、感染性心内膜炎においては特徴的出血様式を示し、診断の手助けになるケースもある。
出血量、出血部位、出血位置、出血後の血行動態等により視力予後が変わる。
分類[編集]
網膜組織の部位により- 網膜前出血
- 網膜色素上皮下出血
- 網膜深層出血
- 網膜下出血
- 脈絡膜出血
出血の位置により
- 黄斑部出血
- 黄斑下出血
原因[編集]
原因として代表的なものが糖尿病網膜症、高血圧性眼底、網膜中心静脈閉塞症、加齢黄斑変性などである。また白血病、感染性心内膜炎においては特徴的出血様式を示し、診断の手助けになるケースもある。
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糖尿病網膜症
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糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう、英: Diabetic Retinopathy)とは、糖尿病の3大合併症の一つ(ICD-10:E10.3、E11.3等)。糖代謝異常に伴う眼の網膜などに各種変化をきたし、視力低下を認め、日本の中途失明の第2位を占める。なお糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害によって生じるものを、糖尿病の「三大合併症 (triopathy)」といわれる。
グルコースはそのアルデヒド基の反応性の高さからタンパク質を修飾する作用(糖化反応、メイラード反応参照)があり、グルコースによる修飾は主に細胞外のタンパク質に対して生じる。細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝されてしまう。インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされるとタンパク質修飾のために糖毒性が生じ、これが長く続くと糖尿病合併症とされる微小血管障害によって生じる糖尿病性網膜症を発症する。糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症の発症も同様の機構による[1]。
HbA1cが極めて高い場合、HbA1c 8.0%までは速やかに下げても良いが、それ以後はゆっくりと血糖値を下げて行く必要がある。急速で厳格な血糖値の低下によって逆に低血糖の発生や網膜症の進展・増悪をきたす場合があるためである。高血圧は高血糖に次ぐ網膜症のリスク要因である[2]。
また白内障が標準より早く進行する。糖尿病性腎症悪化に伴い、腎性網膜症を併発し、眼所見が悪化・著しい視力低下を認めることがある。
グルコースはそのアルデヒド基の反応性の高さからタンパク質を修飾する作用(糖化反応、メイラード反応参照)があり、グルコースによる修飾は主に細胞外のタンパク質に対して生じる。細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝されてしまう。インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされるとタンパク質修飾のために糖毒性が生じ、これが長く続くと糖尿病合併症とされる微小血管障害によって生じる糖尿病性網膜症を発症する。糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症の発症も同様の機構による[1]。
HbA1cが極めて高い場合、HbA1c 8.0%までは速やかに下げても良いが、それ以後はゆっくりと血糖値を下げて行く必要がある。急速で厳格な血糖値の低下によって逆に低血糖の発生や網膜症の進展・増悪をきたす場合があるためである。高血圧は高血糖に次ぐ網膜症のリスク要因である[2]。
疫学[編集]
- 糖尿病そのものに最も相関する。
- 2型糖尿病では、診断時に20%は網膜症が存在する。
- 発症後20年で、1型の100%、2型の60%の患者に網膜症が発症する。
- 日本では中途失明の原因としては最多であったが、平成18年に緑内障に次いで二位となった。しかし、糖尿病性網膜症による失明人数は年間約3000人で、毎年増加しており、緑内障の原因の一部には糖尿病性血管新生緑内障も含まれている。
病態[編集]
血管障害によって酸素欠乏状態になった網膜から、血管を自分のほうへ伸ばすホルモンが放出される。その結果病的な血管が新しく出来る。病的な新しい血管を新生血管と言う。新生血管は非常に脆いため出血しやすく、それによって目の機能に障害が起きる。詳しいメカニズムはまだ明らかではない。単純性網膜症、前増殖期網膜症、増殖期網膜症と進行してゆき、最悪の場合硝子体出血や網膜剥離を来たし失明に至るという経過は知られている。- 眼内増殖性疾患において,網膜面上には線維性増殖膜が形成される。この増殖膜による牽引が網膜剥離の原因となりうる。増殖膜にはtransforming growth factor-β(TGF-β)とRho, Rho-kinase(ROCK)が関与しており、選択的ROCK阻害薬であるfasudilにより、沈静化できることが判明している。[3]
自覚症状[編集]
初期の頃は無症状で経過することが多い。徐々に眼底出血や黄斑浮腫が生じ視力低下、変視症を認めるようになる。硝子体出血や広範囲な眼底出血を伴うと飛蚊症や急激な視力低下を示す。新生血管緑内障に陥ると眼痛、不可逆的失明、眼球癆(眼球萎縮)を示すことがある。他覚所見[編集]
初期には毛細血管瘤、網膜点状出血、血管閉塞、循環障害による滲出、嚢胞様黄斑浮腫を認める。それ以降は眼底出血、硝子体出血、血管新生、増殖膜形成を伴い、著しい視力低下を認める。硝子体出血に伴う急激な視力低下、増殖膜形成に伴う牽引性網膜剥離に伴う永続的視力低下・失明、新生血管緑内障による失明に至ることがある。また白内障が標準より早く進行する。糖尿病性腎症悪化に伴い、腎性網膜症を併発し、眼所見が悪化・著しい視力低下を認めることがある。
分類[編集]
福田分類、Scott分類、ETDRSが用いられる。福田分類でA0以外であれば糖尿病性網膜症と診断できる。単純型網膜症、前増殖型網膜症、増殖型網膜症と言うような病期に分けることもある。検査[編集]
- 眼底検査
- 網膜疾患の基本的検査である。糖尿病に罹患してる際には定期的な眼底検査が望まれる。日本糖尿病眼学会は定期的眼科通院を促すため、糖尿病眼手帳を配布している。
- フルオレセイン蛍光眼底造影
- フルオレセインを静脈内投与し、撮影する。無血管野の確認、新生血管の確認、病期・治療法の決定に用いる。網膜光凝固術を施行する際にはこの結果を参考にして、施行することが多い。
治療[編集]
増殖性網膜症は対症療法としてレーザー光凝固療法、硝子体切除術を行う。光凝固療法はレーザーで酸素欠乏状態のために新しい血管を要求してしまう網膜を焼き潰すことで、血管新生を抑制する。焼き潰す様子を凝固と言う。硝子体切除術は、すでに生じた増殖組織を取り除くとともに、増殖組織が進展するための「足場」を撤去する意味合いがある。- レーザー光凝固術
- 網膜虚血部位に対し光凝固を行う。細動脈瘤に対し実施し黄斑部への滲出及び漏出を防ぐ。血管新生緑内障に至った症例に対しても行われる。汎網膜光凝固術において、短期間に大量のレーザー照射を行うと黄斑浮腫のリスクが高まる。そのためある程度の期間をおいて数回に分けて施行する。
- 硝子体手術
- 手術の主な目的は後部硝子体剥離の作成にある。一般には増殖型網膜症に行われる。術中レーザー光凝固術を施行することもある。黄斑浮腫軽減を目的に早期に手術を行うこともある。白内障が合併している際には同時手術を施行する施設もある。しかし重症例の場合、同時手術により新生血管緑内障のリスクを増大させる。
- ステロイド療法
- 黄斑浮腫を軽減させる目的で、徐放性ステロイドであるトリアムシノロン アセトニドをテノン嚢下又は硝子体内に投与する。術中に硝子体を可視化する目的で使用したり、手術終了時、黄斑浮腫軽減に目的に投与することがある。術中使用においては基材の安全性は確立しておらず、除去後投与する施設が多い。
- VEGF阻害剤
- 新生血管緑内障に至った症例において、新生血管を退縮させる目的でBevacizumab (Avastin) を投与することもある。
- Rhoキナーゼ阻害剤
- 増殖膜の形成を阻害する。現在開発中。(緑内障に対するRhoキナーゼ「K-115」(一般名:リパスジル塩酸塩水和物)は、すでに申請中。)
その他[編集]
- 福田分類B期に当たる際には、糖尿病における運動療法を行うと硝子体出血に伴う著しい視力低下をきたすことがあり、禁忌である。
- 福田分類B期に当たる際には、急激な血糖の改善によって糖尿病網膜症を悪化させる事がある[4][5]。
脚注[編集]
- ^ http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc3/doc3-03-5.html 生体分子に起こる加齢変化 05-異常たんぱく質はなぜ増えるのか?
- ^ 糖尿病一診断から自己管理まで一トピックスⅢ、合併病の見方と治療・管理3、糖尿病網膜症の内科的治療、田港朝彦、日本内科学会雑誌、第89巻第8号平成12年8月10日
- ^ 喜多 岳志 眼内増殖性疾患における増殖膜収縮のメカニズム解明およびROCK阻害薬による病態制御の可能性. 日本眼科學会雜誌 114(11), 927-934, 2010.
- ^ Ohkubo Y, Kishikawa H, Araki E, Miyata T, Isami S, Motoyoshi S, Kojima Y, Furuyoshi N, Shichiri M (1995). Diabetes Res. Clin. Pract. 28 (2): 103-117. PMID 7587918.
- ^ “5. Kumamoto study-糖尿病の大規模臨床研究”. 糖尿病NET (2008年1月). 2012年4月1日閲覧。
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